まなびの島

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2018.3.28-29
1泊2日セミナーレポート


2018.4.20公開  カテゴリ:セミナー

【概要】
まなびの島セミナーとは、「島で学ぶ」・「島に学ぶ」・「人に学ぶ」をモットーに、食や自然が豊かな淡路島での日々の暮らしぶりや、多様性に富んだ様々な働き方を五感で体感する、“地域との向き合い方について考えるセミナー”です。毎年数回開催され、労働組合などの団体から毎回十数名の参加者たちが、全国各地より集っています。

このセミナーでは、淡路島という島の「自然」や「人」と触れ合いながら、自分自身を見つめ直すことで、いまの自分にできることが“見えてくる”。そんな、きっかけ作りを提供しています。

そして毎回、このセミナー講師兼ナビゲーターを務めるのが、この方。

株式会社シマトワークス代表の富田祐介さんです。

「ようこそ、淡路島へ。まなびの島を体感いただき、みなさんが活躍する地域で様々な発見をしていけるよう、淡路島において、ヒントとなるコトやモノをご紹介いたします。」

【プロフィール】富田祐介:株式会社シマトワークス代表取締役。シマトワークスは淡路島を拠点に「観光・食・研修・新規事業」にまつわる戦略づくり・企画提案をしています。地域資源、組織内資源の発掘、これらを活用した企業さま、団体さま向けへの企画提案・コーディネートを行い、地域や組織にある魅力に、新しい視点を加えて、寄り添いながら「わくわく」する企画を提案しています。シマトワークス株式会社 http://shimatoworks.jp/

今回のセミナーでは一体、どんなことに触れ、どんなヒントを学んでいくのでしょうか。そのセミナー内容と、参加者の様子をレポートします!

五感を整え、“身の丈”を学ぶ

(右)山田屋オーナー・山田修平さん

桜も咲きほこり、春爛漫の淡路島で開催された今回のセミナーには、イオンリテールワーカーズユニオン(北関東・南関東グループ)から、総勢10名の参加者が集いました。

北は新潟、南は埼玉と千葉から参加してくれたメンバーの中には、「淡路島へ来たのは今回が初めて」という方も。すでに来たことがあるメンバーでさえ、「何度来ても新鮮に感じる」そんな淡路島の大きな自然と心地良い空気が、今日も参加者たちを出迎えます。

初めに訪れたのは、甘い香りが漂う、太陽の温かさいっぱいに包まれた「山田屋」のいちご園。ちょうどお昼時、すっかりお腹も空いていた参加者たちは、まずはランチをいただくことに。

島の食材だけで作られた彩りも鮮やかなランチボックスに、歓喜の声が上がります。中には「異動したばかりの新しい職場に慣れなくて、ここ最近、落ち込んでいたのですが…すごく元気になりました」と、早くも心境に変化を感じるメンバーも。

日常の喧騒を離れ、緑と海に囲まれながらいただく食事は格別に美味しく、ちょっと贅沢な時間を味あわせてくれます。景色や食事という“島の恵み”の歓迎に、長旅の疲れも一気に癒されたメンバーの顔には、じんわり笑顔が戻ります。

心とお腹がいっぱいに満たされると、いよいよいちご園でのセミナーがスタート。「いちご農家でジャム屋さん」をキャッチコピーにする山田さん夫婦は、淡路島で採れる野菜や果物のジャム屋さんと、観光農園であるこのいちご園を運営しています。

こうした五感が研ぎ澄まされる、開放的な環境で行うセミナーは、一人一人を自然体へと導き、モノゴトの捉え方を柔軟に、発想力もより豊かにしていきます。各テーブルでは、次第に参加者の発言も目立ち、相手の話もしっかり吸収できている様子。

中でも、移住者の山田さんだからこそ語れる“地域に根差した仕事づくり”のお話には、参加者たちも、メモを取る手が止まりません。

-ゆるやかな地域との繋がりを大切に、まずは自分にできることから、“くれぐれも身の丈に合ったやり方”で進めていく-

何度も反芻するように身体中を駆け抜け、大きな余韻を残していく山田さんの言葉たち。一つの方法に固執するのではなく、全体像を見据え、その中からできることをひとつずつ形にしてきた山田さんの仕事のスタイルを学びながら、これまでの自分を見つめ直していきます。

「今までは地域交流と聞くと、自分主体で何かを“しなければいけない”と思っていたので、お話を聞いて、少し気持ちが軽くなりました」

「無理に何かを始めるのではなく、自分のいまやっていることが、“気付いたら誰かのため(貢献)になっていた”それで良いんだと、視野が広くなりました」

こうして、それぞれがキャッチした様々な思いや、新たに芽生え始めた“自身への問い”を抱えながら、一行は、次なる生産者さんの元へと向かいます。

当たり前に気付く「感度」を高める

北坂養鶏場代表・北坂勝さん

続いてやって来たのは、希少な日本鶏を育てている、関西でも有数の養鶏場のひとつ、「北坂養鶏場」。

お父さんの後を継ぎ、養鶏家として働き出した北坂さんは、鶏を飼育し卵を販売するだけでなく、鶏糞までも「島の土」という有機肥料に再利用したりと、その無駄のない一貫した循環サイクルの全てを“養鶏家の仕事”として捉え、働かれています。

普段は店頭販売員として、生産者と消費者のパイプ役を担うはずの参加者たちも無意識だったのが、この“命”を扱う生産の現場。

「スーパーに並べばどれも同じに見える卵ですが、一つひとつ、鶏から生まれてくる命。同じ卵は、この世に一つとして存在しないんです」

改めて、その当たり前の現実に気付かされながらも、北坂さんの的を射たお話は続きます。

自分がいまいる恵まれた環境への感謝 -
人をまきこみ、みんなで盛り上げ、楽しみながら創り上げていく仕事の姿勢 -
身の周りに溢れる、“当たり前”に気付ける「感度」を持つことの大切さ -

ここで伺ったお話もまた、シンプルでありながら、日常で忘れてしまいがちな、一番大切なことばかりでした。

「“人と人との繋がり”って、これまではすごく簡単に口にしていたけれど、北坂さんのお話を聞いて、本当の繋がりとは何かを教えてもらいました」

「自分がいまいる地域のことを、なにも知らなかったことに気付きました。帰ったら早速、“身の周りにある当たり前”を探してみようと思います」

移住後、新たに事業を始めた山田さんと、地元で実家の家業を、自分なりのやり方で継いでいる北坂さん。その二人のお話から、たくさんの“地域との向き合い方”を学んだ参加者たちは、初日最後のセミナーの場、ノマド村へと向かいます。

【ノマド村とは】
淡路島の長澤地区にある、コミュニティスペース。廃校になった小学校を新しい拠点として、様々なワークショップやイベント、週末のカフェなどに利用されています。

ここでは、今日1日を通して得た気付き、そして二人の生産者の話から見えてきた共通点を皆で話し合い、まとめを行っていきます。

そして夜になると、いよいよおまちかねの夕食タイム。ランチに続いてもちろん夕食も、一部の調味料とスパイス以外は全て淡路島産にこだわったメニュー。作ってくださったのは、淡路市で飲食店「食のわ」を営む、神瀬聖さん。

【プロフィール】神瀬聖:「食のわ」料理人。“安心・安全”をモットーに、ケータリングやイベント出店をしながら、生まれ育った淡路島の人や素材の奥にある温かみを伝えています。また、自身でも調味料を一から作るなど、手間暇かけて料理を楽しみ、新しい発想を日々求めて、食を追求しています。

見た目にも華やかな“淡路島尽くし”の食事に、「こんなに野菜をたくさん食べれるなんて嬉しい!」、「素材ひとつひとつの味がしっかりしていて本当に美味しい!」と、自然と会話も弾みます。

こうして淡路島を大満喫しながらも、たくさんの学びを得た参加者たちは、「明日は一体、どんな一日になるだろう」そう期待に胸を弾ませながら、夜更けまで、楽しい時間を過ごしたのでした。

自分自身と向き合い続けた2日間

最終日は、まなびの島の拠点である「ユニオン村」で、淡路島での最後の時を過ごします。宿泊先から、朝一番にユニオン村へと移動した参加者たちは、これまでの振り返りをしながら、いまの自分だから感じられることを、ゆっくり、じっくり言葉にしていきます。

「ここへ来るとき、外に出たら空気がすごく澄んでいて、“あぁ、そういえば朝ってこんな空気だったな”って、普段の不規則な生活で忘れかけていた当たり前のことに気付きました」

「いま、物事をすごく吸収しやすい自分になれているので、今日はどんな学びがあるか、楽しみです」

昨日とは打って変わって、スッキリとした表情で答える参加者たち。一人ひとりの前向きな発言とその意気込み聞けたところで、2日目は本セミナー講師である富田さんの体験と「仕事への向き合い方」に耳を傾けます。

「仕事でモヤモヤしたら、必ずその原因と向き合うようにしている」という富田さんが、いつも仕事をする上で大事にしていること、“ワクワクしているかどうか”を自分たちに置き換え、日常でどんなことにワクワクしているかを考え出し、皆で共有していきます。

美味しい食べ物に出会った時、新しい洋服を買いに行った時、キレイな景色を見た時、熱意のある人と話をしている時…

「普段、自分がどんなことでワクワクしているかなんて、考えもしなかったです」改めて自分を知るきっかけを与えられたことで話が盛り上がる参加者たち。今度はそのワクワクする原動力を、どうしたら行動に繋げていけるかを考えていきます。

「やりたいことをきちんと言葉にして伝えることで、なにかを始めるきっかけになるのでは?」、「そこで興味を持ってくれた人達を、巻き込んでいったらどうだろうか」、「小さなイベントなら、すぐに出来そう!」などと、まさに皆がワクワクする会話が、それぞれのグループで交わされていきます。

無理に背伸びして遠くを見るのではなく、まずは足元に転がるたくさんの可能性を集めて一つの目標をつくることで、「まずはそこから、なにか出来れば良いね」そう、どこか大きく構えられるようになった参加者たちの姿が印象的な午前のワークを終え、ランチタイムへと進みます。

「旨辛食堂るつぼや」の合いがけカレーを受け取ると、ここからは“サイレントタイム”に突入します。サイレントタイムは、他の人と一切会話をしてはいけないというルールの元、自分自身で居心地のいい場所を探し、これまで学んだことや、自分自身とゆっくり向き合う、いわば棚卸の時間。

淡路島の食と自然を介しながら、いままで考えもしなかったことに、一歩立ち止まって目を向けてみる。そんな「心の余裕」を日常生活でも持ち続けられるように、最後は時間の許す限り、自分自身と向き合っていきます。

1時間のサイレントタイムを終えると、いよいよセミナーも終盤。この2日間のまとめに入ります。この2日で感じたこと、これから仕事をする上でどんな変化が生まれそうか、最後に思いの丈を語り合います。

「これまでできなかったことも、今の自分ならできるような気がします」

「これからは、“好きなことをやっていこう!”そう、思えるようになりました」

身の周りを知ることが、いまの自分を知ることに繋がり、それがその先の可能性を見出す“希望”になることを学んだ今回の参加者たち。その表情は晴れやかで、足取りも軽く、

「2日間を通して得たこの感覚を忘れそうになったときは、また淡路島へ帰って来たいです!」そう、笑顔で告げながら、いつもの日常へと戻って行ったのでした。

まなびの島で、“新たな自分”を見つけて。

記事:藤本沙紀